FC2ブログ

utopia

□ スポンサー広告 □

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


→ 「スポンサー広告」目次へ戻る
*    *    *

Information

□ 黎明のレクイエム □

第一章 黒い瞳に映る世界は、果ての闇か救いの閃光(ひかり)か8

【第一章 黒い瞳に映る世界は、果ての闇か救いの閃光(ひかり)か】
第8話

別れの日は皮肉のように清々しい晴天だった。
時々、からりとした秋の風が吹き抜けてランゼはなびく髪をおさえた。
「元気でな」
ロトスがうすい微笑を浮かべてそう云ってくれた。ロトスとユイが見送りに立ってくれている。シーディはそこにいなかった。
ランゼは、その姿をしっかりと焼きつけようとふたりをしっかりと見た。ロトスのよく焼けた肌。癖毛の赤茶の髪。きらりと光る額当て。凛々しく太い眉。かたちよく筋肉のついた腕脚。ユイの白く滑らかな肌。紅い唇。切れ長の黒い瞳。艶やかな黒い髪。女性らしい曲線の身体。
シーディのことも思い浮かべた。風に踊る、蒼みを帯びた銀の髪。つめたい胡桃色の瞳。ふと笑うときの優しい瞳。すらっと背の高い、飄々とした立ち姿。
「シーディが、よろしく頼むって云ってたぜ。あいつ、今日はどうしても都合が悪くて」
悪いな、とロトスが申し訳なさそうに云う。そんな風に気を遣わせるような表情をしていたかと、ランゼは慌てて首を振った。上手に微笑を浮かべて。
「大丈夫、よろしく、伝えて」
ああ、とロトスは頷いた。いつもの無駄なくらいの元気が感じられないのは、すこしでも哀しんでくれているから、と思いたい。そうランゼは思った。
「元気でね。きっとまた、会いましょう」
ユイはとても綺麗に、微笑んだ。弧を描く紅い唇が、美しくてランゼは見惚れた。はい、と微かに声に出して答えるのがやっとだった。
「じゃあ…そろそろ」
そう云ってランゼは後ろをふり返った。此処に来たときよりは増えた荷物を背負ったホウライが、いいのかという風に瞳で訴えた。ランゼは静かに瞼で頷く。
「さよなら」
声にするとあっけなく、哀しすぎる響きだった。ふり切るように言葉を重ねた。
「どうか、無事で」

いつものように賑やかな酒場のカウンターで、一日を無事に終えようとするささやかな喜びとともに麦酒を流し込む。いつも通りに戻っただけだと、ロトスは心の中で呟いた。
「なんだか寂しそうね」
そう話しかけられて、ロトスはふいとカウンターの向こうに視線を向けた。ユイが真意の捉えがたい微笑をたたえてこちらを見ていた。
「たまには無口になるのも、格好いいだろ?」
ロトスはおどけて返してみせて、グラスに残った最後の一口を呷った。はいはい、と軽くあしらって、ユイはロトスの空のグラスを手に取る。視線を合わせてきたので、ロトスは首をふった。ユイはそのままグラスを流しに下ろす。
「シーディは?連絡はあった?」
ああ、とロトスは短く頷いた。昨夜、砦から程遠くない位置の街が襲われたという情報が入ってきたのだった。その街から援護を頼まれ、援軍を率いてシーディは発っていった。そのときにはランゼから此処を離れる決意を告げられていたのだが、シーディはロトスに残るように云って自らは別れの場に立ち会わなかった。
シーディが寄越した連絡役は、街が半分ほど焼失したこと、市民の命は殆どが守られたこと、襲撃はおそらく国軍兵によるものだということ、事態は落ち着いたということを告げた。
「明日には戻ってくると思う」
「そう、よかった」
ユイはそう頷きながら、誰ひとり欠けていないことを願った。いずれ毎日のように、そう思わなくてはいけない日が来るのだと噛み締めながら。
「あの娘が行く街には、もうそんなことがないといいわね」
「そうだな…ないとは、云いきれないけどな」
漏れそうになるため息をロトスは飲み込んだ。いつまでも傭兵をやっているわけにはいかなかった。こうしているうちにもいくつも街が襲われ、潰れていくのが現状だった。
止めなくては。ロトスは19年前、この砦に立っていた父とその友を思った。



→ BACK
→ NEXT

スポンサーサイト


→ 「黎明のレクイエム」目次へ戻る
*    *    *

Information

Date:2010/01/01
Trackback:0
Comment:0
Thema:自作小説(ファンタジー)
Janre:小説・文学

Comment

コメントの投稿








 ブログ管理者以外には秘密にする

Trackback

!-- FC2カウンター ここから -->
にほんブログ村 小説ブログへ
↑にほんブログ村へ
←黎明のレクイエム、エントリー中。ポチッと優しさわけてくださると感激。
←気に入ったら拍手してやってください。お礼SS【胡桃色の記憶】
+
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。