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第一章 黒い瞳に映る世界は、果ての闇か救いの閃光(ひかり)か9

【第一章 黒い瞳に映る世界は、果ての闇か救いの閃光(ひかり)か】
第9話

頬を凪ぐ乾燥した朝の風は肌にすこし冷たい。
色素の薄い青空からはまだ熱っぽい陽射しが照りつけられた。
先頭を行く兵が、帰還を知らせるために緋い旗を大きくふる。
灰色の砦を包み込む同じく灰色の塀の門の前で、同じように緋い旗がふり返された。これですぐに、門衛のひとりが部隊の帰還を傭兵団長であるシーアに伝えにいくはずだ。
門のところまで来て馬から降りると、シーディは手綱を門衛に預け、ほかの兵士にも身体を休めるようにと伝えてすぐにその場を後にした。
報告すべきことを頭の中で整理しながら、一昨日の深夜から、目にした光景を思い出すときりきりと頭痛がした。
一昨日、金一封を持って助けを求めに来た中年の小太りの男とともに、シーディは自らの率いる第一部隊とその街に向かった。第一部隊は急な事態にいち早く行動することの多い部署だ。もちろん、一番危険なことも多いため少数精鋭がそろえられている。
彼らを率いて街に着いたとき、微かに焦げ臭い香気と、静けさと時たま発される怒号が街を包んでいた。
まだ朝早いから報告すべき主は訓練所よりも室にいるだろう、とシーディは宿舎棟を目指した。その入り口で、ロトスが待ち構えたように壁に背をもたれて立っていた。
「よう。全員、無事か」
ロトスはいつもと違った真剣な眼差しをシーディに向けた。シーディは頷く。
「俺たちはな。街は……酷い」
噛み締めた奥歯がぎり、と鈍い音をたてた。
「裕福だから狙われたようだな。金品を盗られたところが多い。あとは、女と……。火をつけられた処もいくつかあったな。抵抗して攻撃したらしい者が数人、亡くなった。怪我人の治療の手は足りた。向こうは、11人を捕らえて街に引き渡した。2人殺した。おそらく倍以上の数で襲ってきていたんだけどな、たぶん早々に手を引いた者は姿を消したあとだった」
シーディの早口の言葉を聞きながらロトスはその情景を思い浮かべる。自然と眉を寄せ唇に歯を立てていた。
「ランゼの、街と似たようだな」
ああ、とシーディは頷く。ふたつの荒れた街と、燃えさかる炎が脳裏に浮かんだ。炎の扉を開けた先の華奢な少女も。
発っていったんだろう、と確認しようとする言葉が口をつく前に、ロトスがきりっとした熱さを湛えた瞳をシーディに向けた。
「なぁ、シーディ」
ただならぬ雰囲気にシーディは言葉を発さず、返す視線で応えた。
「シーアさんは南の民族と手を結ぼうと思っているらしい。それがうまくいったら、この傭兵団を軍として立ち上げるつもりだ。……この腐った国を倒すために」
真摯な眼差しを受けて背に寒気が走った。戦慄とも、武者震いともとれるような感覚。わずかに動揺しながら、解っていた、そんな気がする。
シーディは静かに頷いた。
「俺は、ついて行くよ」
そう告げるとロトスは真剣な表情を崩してにっと笑った。
「おう。そうこなくっちゃな。お前がそう云ってくれたら、一安心だ」
その朗らかな笑顔で、不安や懸念が遠くに感じられた。不思議なんとかなる、と思わせる雰囲気がロトスにはある。彼は一群の長に向いているのではないかとシーディは改めて思った。その彼が絶対の信頼を寄せるシーア・ワグナーも冷静沈着、頭の切れる確かな人物だと感じている。彼らについて行く、その選択に間違いがないと噛み締める。
反乱軍として立ち上がれば、いまのように国に見過ごされることはなくなるだろう。本当の戦いが、始まるのだ。17年前、覇王戦争のときの記憶が浮かびかかって、シーディはふり切るために薄蒼の空を見上げた。



「では、よろしくお願いします」
シーアはそう云って浅く、ゆっくりと礼をした。その姿はまさに紳士的だ。銀色の前髪をすべて整髪料で後ろに固めた強面に、知的な笑み。もう五十を目前にした年齢は傭兵団の中では最高齢で、その分豊富な知識と経験で若き団員たちを導いている。ロトスとは古い『説明するのは面倒な』縁で、周りの者たちにはシーア自身、ロトスのことはかなり信頼し期待しているように映った。
「必ずいい報せを持ってきますよ」
ロトスはそう自信たっぷりに笑ってみせると、出発の準備を整えたシーディと、その隣に背筋を伸ばして立つセイをふり返った。
「行こうか」
セイは唇をきゅっと引き結んで大きく頷いた。彼はまだ二十歳の、少年といってもよい貌立ちだが、実力主義の第一部隊に自ら志願して入った度胸のある兵士だった。その挙動にはまだ未熟さが残るが、熱烈にシーディを慕い努力している。今回も、操る馬の俊足からいざというときの連絡役としての役割を申し出て、同行を志願したのだった。
「期待、しています……いや、信じていますと云うべきでしょうね」
シーアは真摯な眼差しで、もう一度穏やかに微笑んだ。
傭兵団一、二を争う実力の持ち主のロトスとシーディが交渉に向かうのは、レディアス国南部を自治するティヘナ族に対する精一杯の誠意だ。そして、全体が自衛兵団のような集団である自治群に踏み込むための、用心という意味もある。そしてもうひとつの切り札を手にして、彼らは突き抜けるような青空の下、遠く南へと向かった。


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第一章はここで終了です。
まだまだ物語は始まったばかり。ちょっとトントン進みすぎてしまったような気はしますが、
これからどんどん登場人物のあれこれが描けたらなーと思います。
ちなみに拍手お礼では、ヴィゴのパン屋の少年がみなさんに突撃質問をしております。
これまでターゲットになっているのは、面倒見のいい兄貴ロトスと、つかめないけど性格も外見も美人さんシーディです。
よければ覗いてやってください。これからもうちょっと増える予定です。
ではでは第二章に続く。
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Date:2010/01/04
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Thema:自作小説(ファンタジー)
Janre:小説・文学

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