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□ 黎明のレクイエム □

第二章 それは意志であり運命である1

【第二章 それは意志であり運命である】1


砦を出て、初めの日半月だった月がいまはもう満月になろうとしていた。
人気の多い街を越し、拓かれていない林地をけもの道を探るように進んでいる。からりとした秋の陽気だったはずが、蒸し暑さに汗が滲んだ。
セイはちらりとシーディを見遣った。こめかみあたりに髪がはりつき、つうっと汗が顎を流れる。きっと眉が顰められた。彼の故郷だという北の自治郡は、夏でも涼しい気候のところだったなと思い出す。
そんなことに気をとられていると、前を行くロトスが急に手綱を引いたのでセイも慌てて馬を止めた。どうしましたか、と訊きそうになって、ふたりのただならぬ雰囲気に口を噤む。
ざわざわと木々を揺らす風の音が耳についた。鳥や虫の声を、馬の鼻息が掻き消す。おそらくなにかの気配がしているのだ、ということを汲み取って、セイは意識を集中させた。しかし違和感を見つけられず、焦燥感が募る。
「商人、というわけではなさそうだ。この先はティヘナ族の陣地だ。用がなければ引き返せ」
低く、よく通る鋭い声。突然の人の声に背筋をひきつらせたセイは、更なる物音に瞳を見開いた。
がさ、という葉の擦れる音とともに、太い木の枝をしなわせて、脚を引っ掛けぶら下がる人の形が現れた。否、人、男だ。初めて眼にする、褐色の肌。ティヘナ族は、大陸で唯一褐色の肌を持つといわれている。その肌の上の、際立つ白眼に灰色の瞳が鋭く一行を射ていた。
「ご忠告ありがたいが、用がない、わけではないんだよな」
声にロトスを見遣る。後姿しか見ることはできないが、真剣な瞳をして、にっと笑う、その姿を想像した。
男は逆さのまま、嘲るように唇を歪ませた。
「用がある、と? 侵攻には少なすぎる。我が民族に助けでも求めに来たか」
「ああ、その通り。どうみたって非力で無害だろ? お前たちの女王様に逢わせて欲しい」
堂々としたロトスの姿を内心で尊敬しながら、セイはぶら下がる男に視線を向けた。男は嘲りを消した眼差しで沈黙したあと、一度ゆっくりとまばたきをし、するりと半回転して地面に降り立った。
背を向けたまま、ふり返り気味に睨むような視線を3人に向ける。立てばシーディやロトスよりも背丈のあるだろう細身の大男だった。短い髪は白に近い。
「いいだろう。族長に逢わせてやる。しかし、身の保障はしない。わが民族の何をも、穢すことは赦さん」
そう云って前を向き歩き出した男の後ろを、3人は無言でついて行った。


見渡す街の景色は、見知ったものとは違っていた。
建物の構造や色彩がレディアス国のなかでよく見るものとは違う。円錐状の高い天井と、原色使いの織物が目につく。大陸の長い歴史の中でも、ティヘナ民族は国家に支配されず独自の文化を守り続けてきたのだということを物語っているようだった。
そして当たり前にたくさんいる褐色の肌の人間たちの険しい視線に、セイは冷や汗をかいた。
やがて十数名の武装した兵士が立ち並ぶ門の前で、長身の男は脚を止めた。
「ライアさまに客人だ。接見の間にお呼びしてくれ」
ひとりの兵士にそう声をかけると、すぐさまその男はその向こうの大きな建物に駆けていく。
男は逆に恐ろしい無表情で3人をふり向いた。
「族長の居住地と我々親衛の要塞だ。下手な真似をすると命はない。憶えておけ」
セイはその迫力にごくりと息を呑み、ちらりと横を見た。ふたりからは多少の緊張感は覗けるが物怖じする様子もなく、セイはすこし恥ずかしくなった。


いやに長い廊下を抜けると、ひどく絢爛な装飾を施した広間が姿を現した。
金や色とりどりの糸で獅子や孔雀といった鳥獣が描かれた絵画のような飾り布が広い室内の壁のいたるところにかけられている。梁や窓の桟は金色の塗料が塗られ、数段上がった壇上に大袈裟なほど豪勢な椅子が陣取っていた。
あの椅子に座るのが族長なのだろう、とセイはまだ姿の見えないその人を探してかるく視線を巡らせた。
いまティヘナ族を治めているのはまだ若い女なのだと噂に聞いた。眼の前の屈強な男を配下に置くような女とはどんな人物なのか、たおやかで優雅であるのか、それとも獰猛な獣のようなのか。セイは好奇心を膨らませた。
「この者たちか。私に用があるというのは」
掠れ気味の声が背後から響いた。どっしりとして鋭い、声。
思わず呼吸を止めた。




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Date:2010/01/08
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Thema:自作小説(ファンタジー)
Janre:小説・文学

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