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□ 黎明のレクイエム □

第二章 それは意志であり運命である2

【第二章 それは意志であり運命である】2


「ライアさま」
男は膝をつき礼をした。3人は身体を捻り、男が向いた先に視線を向けた。
不敵な笑みで3人をねめつける、その瞳は左が金、右が銀だった。夜の闇のような藍の髪が流れ、肌はやはり褐色。息を呑むような怪しい雰囲気を纏う女だった。その気位の高さと存在感を表すようなかなりの長身だ。
「戦士か」
呟くようにそう云うと、男に立つように告げてから壇の上に上った。大袈裟な椅子に腰を下ろすとゆっくりと脚を組む。腕は躊躇いなく肘掛に乗せ、ゆったりと椅子にもたれた。
不思議にその振る舞いに厭味がないとセイは思った。威風堂々、その言葉が似合う女はシーディやロトスとさほど変わらない年齢に見えた。
「何の用だ」
ぴしゃりと云い放つ声が響いた。
「噂には聞いていたが、迫力のある女だな」
ロトスは笑みを含ませた余裕の声を出す。隣に立つ男が鋭い瞳で睨んだ。
「言葉遣いに気をつけろ」
「いい、ジン。云わせておけ」
ライアは楽しむように唇に弧を描いた。親指を唇に押し当て、鋭い視線を3人に向ける。
「俺たちは傭兵団の兵士だ。団長の命を受けてここに来た。兵力は1万。小さいが、力はある。レディアス国がいますごく荒れているのは知ってるだろう。俺たちは反乱軍を起こすつもりだ。……協力して欲しい。用件はそれだけだ」
ロトスは落ち着いた、冷ややかなほど真剣な声でそう告げた。それはまるで火山の奥で静かに燃える焔のようだった。
セイはライアと呼ばれた女族長を窺い見た。射るような金と銀の瞳が放つ色は冷たい。
「断る。そちらで潰し合ってくれれば良い。我々は無駄に命を削るつもりはない」
はっきりとよく通る声が冷ややかに打った。それでもロトスもシーディも動揺する様子はない。そうなることを知っていたかのように。
「このままではいつかレディアス国軍はティヘナ族を攻撃するはずだ。聡明な族長さんなら、気づいてるはずだろ」
はっきりと突っぱねられ断られても、ロトスの声はゆったりと余裕を持っていた。ライアは不機嫌そうに眉を寄せたが、特に言葉を返すことはなかった。ロトスが続けて口を開く。
「17年前の覇王戦争を憶えているか。知っているか。覇王ランゼはレディアス国のティヘナ侵攻に反対し、仲間を引き連れて国軍を裏切り挙兵した。ランゼの妻がティヘナ族出身だったからだ。ランゼは最期には仲間を裏切り、妻を殺してティヘナ族も裏切ったということになってるが……違うんだろう」
セイもその頃はまだ2,3歳の子供だったので実際は知らないが、史実としてその話はよく知っていた。それを違う、と云うロトスの言葉に内心驚いて耳を澄ます。
「結果的には妻とともに死んだがティヘナ族を裏切ったわけじゃない。ランゼの落城と同時期に仕組まれていたティヘナ侵攻を阻むために、ランゼは自らの陣営を薄くしてまでも、勝算がなくとも腹心の戦士を向かわせて守った。そうじゃないのか」
ロトスの語り始めた事実は、セイをおおいに驚かせた。けれど感心に違和感が浮かび上がる。
「そんなに詳しい奴がいるとはな。……それで?なにが云いたい」
ライアが冷え切った瞳で訊いた言葉、それがまさに浮かび上がった違和感だった。ロトスの話は、全く糸口が見えない。それともそう思うのは自分だけなのか、とセイは隣のシーディを見上げた。
シーディは静観するような無表情で、その感情を汲み取ることはできなかった。
「ティヘナの前の族長はランゼとの友好の証に、ランゼとその腹心の兵士たちに贈り物をしたんだよな。これだろ」
セイは思わず驚いて顔ごとロトスのほうをふり向いた。ロトスが腰袋から取り出したのは、金のあでやかな装飾が施された短剣だった。その色彩、描かれた孔雀は、まさにこの室の壁にかけられている飾り布と同じ様式だった。
「……確かに、それは私の父が覇王に贈ったものだ。……お前、ただの物知りではないようだな。何者だ」
驚いているはずのライアの表情は取り澄まされたままだった。抑揚のない声はあるはずの感情の高揚を感じさせない。
「べつに、たいそうなことじゃないぜ。俺の父親はランゼの腹心だった。ロディ、というのが父の名だ」
ロトスの放った言葉に、しばしの沈黙が訪れた。
セイは呆然とし、そのままロトスの横顔を凝視していると眉を寄せたシーディの冷ややかな視線に咎められた。
ライアもジンと呼ばれた長身の男も、事態を冷静に呑み込もうとしているのか、すぐに相槌を打たずに無言だった。
沈黙を破ったのは、ライアだ。
「そうか。似ているな」
その声はいままでと打って変わって、穏やかに響いた。空気が変わったのは確かだった。





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Date:2010/01/08
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Thema:自作小説(ファンタジー)
Janre:小説・文学

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