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第二章 それは意志であり運命である4

【第二章 それは意志であり運命である】4

長老会を訪問するために、ライアは正装である衣装を身に纏っていた。くすんだ金色の光沢ある生地が、褐色の肌によく映える。裾に向かって膨らむ形を足首につける煌びやかな足環で絞る、それがティヘナ族の正装として受け継がれてきた衣装だった。首と腕にも、揃いの装飾をつけて着飾る。
長老会というのは、いわば後見役の組織だ。その名の通りに、族長を務めたことのある者やその側近だった者などあらゆるティヘナ族中枢で務め、いまは一線を退いたいわば古株の者たちで組織されている。すべての権限は族長に委ねられているものの、実際はそれを評価し実行の可否を判断する彼らが実権を握っているようなものだった。
腕環の金具を留め、ライアは後ろに控えるジンに、後ろをふり向かぬまま訊いた。
「ジン、お前はどう思う」
ジンはライアよりもいくつか歳上のはずだった。だが初めて逢った、十かそれくらいのときには族長の娘ライアと親衛のジンには主従関係があった。もしそう生まれなければ、という想いは二十を過ぎる頃には捨てた。
抑揚のない声が背後から返ってくる。
「解りかねます。長老会の面々は頭が固い、ですが」
ライアは小さく頷いた。ティヘナ族は、むやみに危険と暴虐には手を出さない。ティヘナ族は、昔の恩義を裏切ることはない。ティヘナ族は、ティヘナ族を守ることが何よりの役目。
もし、自分がティヘナ族の族長でなかったら。
もし、ティヘナ族の信念を無視したら。
自分は彼らについただろうかと考える。
父の背を見、同じように国の暴挙に立ち向かおうとする者。
惜しくないという命を、そのために燃やそうとする者。
自分ならそこにどのような理由をつけて、戦うことを選ぶのだろう。
「ジン、私は……この身分を捨てられるのなら、そのために、あいつらにつくのかも知れない」
踵を返したがそこに佇むジンの表情は見ないままに、ライアはその横をすり抜け室を出ようとする。
「……そのときは、私も」
消え入るような声は現か幻か、ライアは確かめようとはしなかった。


「あー、つまんねぇな」
ロトスはそうぼやくと唐突に胡坐を崩し、豪快に寝転んだ。
念のためと武器を取り上げられ、食事は届けられる上によくできた室には風呂と便所が備え付けられ、一行は軽い軟禁状態だった。
普段は不足する睡眠の穴埋めをするように、壁に背を凭れ座り込んだまま眼を閉じていたシーディが瞼を押し上げる。その瞳は冷ややかにロトスを見ていた。
セイは、そんなふたりを見て言葉をかけるべきか迷う。なにかゲームでも提案しようかと思い立ったが、普段仲間うちでするゲームはどれも上官である彼らに披露するわけにはいかなかった。
寝転んだまま腕を組み苦悶するロトスと、たぶん眠たくはないのだろうが長い睫毛を下ろしているシーディとを交互に見、セイは不穏な空気に追い詰められて声を発した。
「あ、あのっ、ロトスさん」
瞬時に赤茶と胡桃、二対の瞳が向けられてセイはどきっとした。
「おう、どした」
ごくりと唾を呑み込んでから、上体を起こし胡坐を組みなおすロトスの赤茶の瞳をみつめ返す。
「俺っ、覇王戦争のことが知りたいです。ロトスさんが知ってる本当の覇王戦争」
ロトスは一瞬目尻を引き攣らせたが、渇いた笑みをうっすらと浮かべて頷いた。
「ああ、いいぜ。さすがに俺も当事者じゃないからな、そこまで詳しくもないが」
セイは声を弾ませて頷いた。
「それでもいいです。俺、17年前の戦争のときは3歳くらいだったんで記憶はなくて、本を読んで知ってるだけなんです。すっかり騙されてました」
「ああ、まあ、ほとんどがそうだろ。戦争なんて負けたほうが悪者になるんだ」
頭を掻きながらなんでもなく云い放つロトスに、セイは感慨深く頷いた。自らも胡坐をすこし正して背筋を伸ばす。
「ロトスさんはその頃……11歳?ですか?」
「そうだなぁ。可愛かった頃だぜ」
セイは本気で噴出しそうになるのをこらえて、はは、と渇いた笑い声を立てた。横眼でシーディを見ると、彼は眠るのを諦めたようで曲げた膝の上に腕を乗せ、その腕に頬を寄せるようにして虚空を眺めていた。その頃、8歳の少年であった彼の姿をセイは思い描く。描かれるのは控えめで落ち着いた、少年らしくない少年だ。
ロトスに視線を戻して思い浮かんだのは悪戯好きのやんちゃな少年で、思わず笑みを零しそうになった。
そんなセイにかまわずロトスは話し始める。
「ランゼがもとは国軍の幹部だったことは知ってるよな。その頃国では統治といって東西南北各地域で横暴な支配や処刑がはびこってた。そこで南のティヘナ族にも手を出そうとしたところで、ティヘナ族出身の妻を持つランゼは軍を追われて、反乱を起こしたわけだ。国軍内部で、国の支配行動に反感を持っていた奴らを引き入れてな。……けど、その頃の国軍はたぶんいまよりもずっと強かった。半年近く戦争は続いたが、ついにランゼは手勢少なくして砦を包囲された。そのとき、ランゼは国軍が南の自治群、つまりティヘナ族と東農村地帯の最大都市ノルディスを襲うという情報を得ていたんだ」







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Date:2010/01/10
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Thema:自作小説(ファンタジー)
Janre:小説・文学

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