FC2ブログ

utopia

□ スポンサー広告 □

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


→ 「スポンサー広告」目次へ戻る
*    *    *

Information

□ 黎明のレクイエム □

第二章 それは意志であり運命である6

【第二章 それは意志であり運命である】6

「そうやってランゼは妻と共に自害して、ノルディスはいくつかの集落が全滅、ティヘナ族侵攻はランゼの落城で中止されたが前線にいた反乱軍は全滅、前族長は数年前まで生きていたが後遺症が酷かったそうだな。覇王、っていうのは本来なら武力で国中を制圧しようとした前国王を呼んだ言葉なんだろうが、皮肉をこめてランゼは“覇王ランゼ”と呼ばれた。で、あの戦争は“覇王戦争”って呼ばれるようになったわけだ」
おしまいだ、と云いたげに伸びをしてから、ロトスは荷物の中から水筒を探し出すと温くなっているだろうそれを口に含んだ。
セイはうまい感想の言葉が見当たらず、短くため息を漏らした。自分の中に描かれていた、覇王ランゼや覇王戦争の姿が崩れていく。そして、ライアが似ている、と云った剣士、ロディの姿を眼の前にいる赤毛の男に重ねた。そしてもうひとつ、確かに聞いたよく知った名前を思い浮かべた。それは彼らの、長である人物。
「シーアって、あのシーア団長、ですか……」
なんだか胸が痛くなる気分で、セイはロトスに訊いた。
「ああ、そうだ。再会したときはさすがに、驚いたな」
あっけらかんとロトスは云い放つ。シーアがロトスを探して傭兵団に呼んだのだという噂をセイは聞いたことがあった。親しげなふたりの関係には興味が持たれたが、説明するのが面倒だ、と云っているらしいということも。いまのいままでそんなことはすっかり忘れていたのだが。
「シーアさんが俺と母さんを援けに来て、それからすぐノルディスの俺たちの集落は全壊された。シーアさんは俺たちの命の恩人なんだけどな、戦争が終わってふらっといなくなっちまった。その理由は教えてはくれないが、シーアさんも覇王戦争では戦犯だからな。俺たちを案じてくれたんだろう」
「だけど、17年経って、仇を」
「仇、っていうのはどうか解らないが、遺志を継いでくれたんだろうな。すごいひとだよ」
ロトスは後ろに伸ばした腕をつくと、胸をそらせて胡坐を解いた脚を投げ出すように伸ばした。その脚の先の方にいるシーディは話を聞き始めたときと変わらない体勢で、ただロトスの足が伸ばされてちらりとそちらを見た。
「やっぱり北の自治群も、国軍の制圧に遭ってたんですか」
セイが声をかけると、シーディはおもむろに顔を上げた。暑さの所為なのか、その瞳は気だるい。
「……ああ」
最初は真っ直ぐにセイに向けられていたシーディの胡桃色の瞳が、ふと逸らされた。
「自衛兵団で、俺も戦った」
そうか、自衛兵団はそういうときに活躍するのだなと納得して話を受け入れようとして、セイは思い留まった。2,3度大きくまばたきをする。
「8歳くらいの、ときですよね?覇王戦争って」
「……そうだよ」
そう答えるシーディは、かるく眉を寄せて面倒そうな表情をしていた。まるで、余計なことを云うんじゃなかった、そう思っているように感じられたが、セイは気づかないふりで続ける。
「北自治群ではそんな頃から従軍制度があるんですか? それにそんなまもない兵士を」
シーディは面倒そうに視線を逸らした、そのままで膝の上に肘を乗せ、その親指を下唇に押し当てた。セイはふと、シーディがそういった仕種をするのを何度か見たことがあると思った。
「いや、俺はたまたま早く入団しただけだ。まもなくもなかった。2年、経ってたからな」
途中で、え、と訊き返したセイの声を無視して、シーディは眉間から力を抜いて云った。
「団長はとんでもなかったからな。荒修行」
セイは返す言葉を失って、援けを求めるようにロトスを見た。おとなしく話を聞いていたロトスは、いきなり視線を向けられて驚いたように眼を丸くしたあとおどけたように笑った。
「まあとんでもなかったが、あのひとのおかげでいまの強いシーディがいるってわけだ」
そういえばロトスは昔北自治群の自衛兵団に世話になっていたことがあると云っていたなと、セイはため息が出そうになりながら思った。そのロトスをシーディが屹と睨みつける。
「なっ?」
満面の笑みを向けるロトスに、シーディは呆れたようにため息をついた。その瞳が優しい色をしていることに、セイはささやかな平和を感じる。
すこしでも経験と、功績を求めてこの道程についてきた。収穫はそれだけではなく、来てよかったとセイは心の中で呟いた。
このひとたちと一緒にいたいと、同じ道を辿ることに後悔はないと、確かめて噛み締める。彼らは依然遠いひとであるけれど、近くに感じることはできると気がついた。






→ BACK
→ NEXT
スポンサーサイト


→ 「黎明のレクイエム」目次へ戻る
*    *    *

Information

Date:2010/01/14
Trackback:0
Comment:0
Thema:自作小説(ファンタジー)
Janre:小説・文学

Comment

コメントの投稿








 ブログ管理者以外には秘密にする

Trackback

!-- FC2カウンター ここから -->
にほんブログ村 小説ブログへ
↑にほんブログ村へ
←黎明のレクイエム、エントリー中。ポチッと優しさわけてくださると感激。
←気に入ったら拍手してやってください。お礼SS【胡桃色の記憶】
+
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。