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□ 黎明のレクイエム □

第二章 それは意志であり運命である7



【第二章 それは意志であり運命である】7

長老会の者たちが集う棟の一室。
一連の事情を報告した2日後、ライアは再び長老会に呼び出された。
煌びやかな正装の衣装も、腕環と足環がそれぞれの枷に感じられる。
ティヘナに生まれたことは誇りである。しかし同時にそれは重い枷だ。族長の家系に生まれた、そのことはさらなる錘(おもり)だ。
もうとうに諦め受け入れたはずだった。それなのに揺れる心に、いまはまだ気がつかないふりをする。
「参りました」
凛として告げた。
「お入りください」
しわがれた声が扉の向こうからし、ライアはおもむろに扉に手をかけた。
扉の向こうに長老会の面々をみとめ、ライアは深々と礼をする。
「…顔を上げてください」
向けられる形ばかりの敬意。
顔を上げればいくつもの視線が向けられている。そこに敬意がこもっているわけもなく、ライアは思わず嘲笑を漏らしそうになった。
一歩前に進み出て、片膝をつく。俯きがちに、声を待った。
「援軍の件に結論を出しました」
長老会の長が低く重たい声で告げた。彼は先先代、ライアの祖父の頃から族長一族に仕えていた古株だ。祖父はとても厳格な人であったと聞いている。ライアが生まれて間もなく亡くなったが、生まれた子供が女だと知ったとき、ひどく落胆したのだと人の噂に聞いたことがあった。彼はそんな祖父側の人間であるに違いない。
ライアは視線を上げないまま、次の言葉を待った。
「この短剣…ティヘナのものとして間違いないでしょう。古い鍛冶屋に視てもらいましたが隠し文字も入っておりました」
長老会の長、ジルムは腰を上げ、ライアの許に寄ると短剣をそっと床に置き、ライアの前に差し出した。一度目の接見のあと、ライアがロトスから借り受けて見せていた友好と信頼の証とされる金の短剣だ。
ジルムはもとの位置には戻らぬまま、呻るような低い声で告げる。
「ティヘナ族は恩義に報いる一族です。しかしティヘナ族にとって、一番重要なのは我が民族を守ることです」
幼い頃から何度も聞かされた言葉だ。そしてこの身に、染みついている言葉だ。
ティヘナの誇り。
「そこで」
ライアはごくりと唾を呑み込んだ。
蒸し暑い静寂をジルムの声が遮る。
「我が軍の持つ三分の一の兵力を、援軍に出しましょう。そこには、少なからずの誠意として、族長、あなたも加わっていただきたい。それが、私どもの結論です」
声を言葉に咀嚼する。ただの音のように響いた声が、意味を持ってライアのなかに響いた。
「いかがですかな」
窺いみるジルムの瞳には、無表情のライアが映されている。
すべての意味を呑み込んで、ライアは唇を引き結んだ。
自分には、ティヘナを守る役割を与えられないのだ、と知る。誠意などうわべだけだ。そして、視線を上げてジルムと、長老会の面々を直視する。
「承知しました」
睨みつけるような金と銀の真摯な眼差しに、彼らはつい息を呑んだ。
獰猛な獣のようなそれ。底知れぬ迫力に冷や汗まで浮かびそうになる。
「私はティヘナの未来のために、国に立ち向かいましょう」
そう敢然と云い放つと、ライアはすっと立ち上がった。身につけた装飾具が音を奏でる。
「私の不在の間は、そちらで決めて代理を立てていただいて構わない。私は一刻も早く準備をします」
勢いよく云い放ったライアに、ジルムの後方に座る男が漏らす。
「やけに生き生きとされておりますね」
そんなに早く此処を出たいのか、そのいやらしい笑みを含んだ声はそう云っているように感じた。
ライアの胸の中に沸き起こるのは、怒りよりも冷めた感情だ。
「…このまま戻らなくていいと思っているのは、貴方がたの方ではないのか」
ふり返りざまに云い捨てるようにして、ライアは室を後にし、乱暴に扉を閉めた。
扉の傍には、ジンが静かに佇んでいる。
「……受け入れたのですか」
臥せがちの瞳を上向かせることなく呟くように云う。
「族長が領地を離れるなど……ましてそれを勧めるのは…侮辱です」
いつの間にその灰色の瞳がライアに向けられていた。ジンが意見するなど珍しい。
ライアはその瞳を真っ直ぐとは見ずに、唇に笑みをつくった。
「…いい。…一瞬でも望んだことだ。私はティヘナから解放されたのだ」
ジンはきつく眉を寄せた。それはライアの瞳に映らない。きつく握られた拳も、映ってはいない。
ライアは一度ゆっくりとまばたきすると、天を仰いで潔い笑みを浮かべた。その金と銀の瞳は煌々と輝く。
「ティヘナの誇りを以って、ティヘナを守るために、私は戦うのだ。私はティヘナ族の族長だ。その誇りは失っていない」



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番外編をほそぼそ執筆中。
いちばん下のねこちゃんが秘密の扉です。
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