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□ 黎明のレクイエム □

第二章 それは意志であり運命である9

【第二章 それは意志であり運命である】9

やばい。
セイが本能的にそう思って飛び起きると、きれいにたたんで重ねた寝具の上に腰を下ろすシーディの冷ややかな視線とぶつかった。
「あっ……おはよう、ございます」
頭を掻きながら気まずく視線を泳がせると、多少乱雑に重ねられた寝具の上に同じように腰を下ろすロトスの半笑いの顔が眼に入る。
「おぅ」
「おはよう」
意外にもあっさりとした返答に、セイはそそくさと起き上がり剥げた上掛けを引き寄せて丸めた。
「砦なら大目に見るけど、こういう処で熟睡するのは感心しない」
危惧していた、ロトスいわくシーディの“小言”にセイはびくっと肩を跳ねさせた。そのままきゅっと萎縮し、すみません、と呟くように謝る。それをロトスが面白そうに眺めていた。
横によけられていた食事のトレイをロトスが近づけてくれるのに手を伸ばしたところで、性急に扉を叩く音が響いた。返事など待つつもりもないように扉が開け放たれる。
「失礼する。長老会から許可が出た」
突然現れたライアの姿に、3人は一瞬眼を見張った。
民族正装を身に纏い、煌びやかに着飾った昂然たる一族の長。匂い立ちそうな雰囲気を醸し出す、それは高貴な獣だった。
きれい、だ。
セイは不用意にもそう思って、呟きにならなくてよかったと安堵した。また睨まれるところだ。
「それって、つまり、だよな」
ロトスが弾んだ声を響かせた。その声に同調するように、セイにも晴れ晴れとした気持ちが広がってくる。
「ああ。我がティヘナ族はお前たち、ロディの子息と仲間たちに協力する。国軍に立ち向かうために」
ライアは腕を組み、開け放した扉に寄りかかるようにして不敵な笑みを浮かべていた。金と銀の瞳が、獲物をみつけた獣のように妖しく光る。
「そうか、よかった……」
ロトスは興奮気味にそう云って、腰掛けた寝具の上から立ち上がった。扉に寄りかかるライアに歩み寄る。
「ただし」
ライアの冷えた声が熱を帯びる空気を突き刺した。
「え?」
「参加するのはティヘナの兵力の三分の一だ。私を含む、な」
ライアは自らを嘲るように微かに笑みを漏らした。その後ろで、ジンが険しい表情を貼りつかせている。
セイは一呼吸の後、ライアのその笑みの意味を理解した。族長であるライアが、全軍の三分の一を率いて他軍に協力する。その軍とは、国に反旗を翻す攻撃的な軍。
「……私も長老会には甘く見られたものだ。もともと好ましく思われていないのは解っていたが」
ライアの眼の前に立ち尽くして、ロトスは困惑げに眉を寄せていた。
ティヘナ族の長、国でいえば王に当たるような人物が、戦力として送り込まれるのだ。その地にとどまり、その地を守り民を導くのではなく。
「だが未練はない。恩人に報い、脅威に立ち向かう。決意に揺るぎはない」
そうどっしりとした声で云い放つと、ライアは自らロトスの前に手を差し出した。弾かれたようにロトスも手を差し出しその手を握り返す。
「頼もしいぜ。よろしくな」
ああ、とライアは低く頷いた。一瞬の沈黙が訪れる。
「ありがとう」
金と銀の双眸を真っ直ぐとは見ずに云ったロトスの言葉に、ライアはかるく眼を見開いた。そして貼りつけられた鉄面皮が崩れるようにやわらかく笑った。
その微笑は、虹のようにすぐに姿を消す。代わりに凛とした瞳が向けられた。
「我々も準備がある。3日は戴きたい。先に本拠に戻るか?それならばジンを同行させる。代わりに誰か独りが残って欲しい」
「おう、早く状況を報告したい。セイ、お前に重役やるぜ」
セイは唐突にふり向いたロトスの言葉に一瞬、眼を丸くした。
「えっ?」
素っ頓狂な声をあげてから、その言葉の意味をやっと呑み込む。傭兵団の代表としてティヘナ族の許に一時残れというのだ。
「は、はいっ!」
焦って立ち上がり、敬礼する。途中、上掛けを踏んづけて足元がもたついたが気にしない。
「解った。見送ろう、室の前にジンを待たせておくから準備が整ったら呼んでくれ」
そう云い放つとライアは足環をシャランと響かせ踵を返した。閉じようとする扉の隙間で、ジンが軽く頭を下げて背を向けるのが見えた。

ティヘナ族が、戦力として加わる。これでレディアス国に対する反乱の手札は、揃った。


遠ざかって行く3つの背中を、眩しく、ライアは眺めていた。
隣に立つ、ジンよりははるかに背が低い、少年という域をぎりぎり越したばかりの青年を見遣る。
「手を借りることもあると思うが、しばらくは室でゆっくりしていてもらって構わない。用があれば呼びにいく」
そう云いながら、頷く青年を見ながら、脳ではほかの事を考えていた。
自分がこの地を離れている間は、べつに長老会の選んだ族長が立てられるのかも知れない。そうすればもし無事に帰ってきたときも族長の座が保障されるわけではないのだろう。自分は前族長の遺言であるがために渋々、女だという軽蔑を受けながら族長の座に認められているだけのこと。よく思わないものも多い。
それでも構わない。大儀な身分を脱ぎ去ることは、幼い頃の願いだった。
ライアはもう一度だけ、見えなくなった背をふり向いた。






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ここで第2章は終了です。
傭兵団のロトス、シーディ、セイ、ティヘナ民族のライア、ジンが主な登場人物で描かれたお話でした。
セイは兵士として熱烈にシーディを尊敬しています。実力は同じくらいだけどロトスさんよりも、シーディさんみたいです。親しみやすいロトスさんよりも、ちょっと怖いくらいのシーディさんの方が尊敬のしがいがあるそうです。
ロトスとシーディの間には単なる友情を超えたふかーい絆があります。そのわけは…後日明かされるのです。
同じくティヘナのライアとジンは、ふかーい信頼関係の絆があります。ライアとジンの想いは…ご想像におまかせで。

ところでタイトルの「それは意志であり運命である」の『それ』とは、気づかれた方もいるかもですが、(たたかう)『理由』です。
この章ではそれぞれが、思い思いの理由について云ったり考えたりしているのです。

さて、第三章に続きます。
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